JATECの普及に伴い、PTDの撲滅という外傷初期診療の中核となる考え方は徐々に浸透しつつあります。次なる課題は、外傷初期診療で行われる、蘇生としての手術およびPTDを回避して初期診療を完結できた重症外傷患者の根本的手術をどのように行うのか(標準化するか)ということにあります。JATECの理念に基づかない外科手術はPTDを誘発し、初期診療で安定化された患者の救命を危うくするものでもあります。また、外傷外科手術は一人の優秀な外科医だけで完遂できるものではなく、チームワークが重要な要素なっています。
本コースの目的は、JATECの基本理念を習得しかつ、日常的に外科臨床に従事している外科医もしくは救命医と手術室(救急初療室)で勤務する看護師を対象として、重症外傷患者手術に対してどのような治療戦略で臨み、どのように戦術(術式)を決定していくのかを習得するとともに、加えてその理論をシミュレーションで実習し、外傷外科医、外傷看護師の個人スキルを向上させ、外傷外科手術チームを養成することにあります。一般外科にはない外傷外科の特殊性を学習し、患者救命のための治療戦略の組み立てができるような講義を受講したのちに、基本的な外傷外科的手技を実際の手術さながらの環境で経験し習得するコースです。